研究実績

研究実績

脳血管障害者における路上運転評価不可群の運転行動と神経心理学検査
Driving behaviors of on-road driving assessment unfit group in stroke patients

農協共済中伊豆リハビリテーションセンター 生田純一 那須識徳

【目的】本研究では,実車評価において不可となった脳血管障害者の運転行動の特徴を明らかにするとともに,机上における神経心理学的検査や運転適性検査との関連性について分析し,実車評価時に着目すべき運転行動を明らかにすることを目的とした.

【方法】対象は,2016年6月から2018年12月の期間に中伊豆リハビリテーションセンターに入院していたもので,自動車運転の再開を希望し,実車評価を実施した脳血管障害者113名を後方視的に調査した.調査項目は,6項目の神経心理学検査,J-SDSAの下位検査,実車評価を通して教習指導員が評価した具体的な運転行動58項目および総合的な運転適性評価である.実車評価は,教習車両を用いて指導員が助手席に同乗のもと,約50分実施した.その際のコースは対象者によって変更されることもあったが,概ね規定されており,運転行動の項目の全ての評価が可能となるコースであった.統計学的解析としては,指導員の総合的評価に基づいて,適性あり群と適性なし群に分類した.具体的な運転行動58項目については,2値データへ変換し,15の大項目へ分類した後にχ2検定およびFisherの直接確率検定にて比較した.有意差を認めた項目に該当する対象者については可群、不可群において一般情報,FIM,神経心理学的検査,J-SDSAについてMann-WhitneyのU検定にて群間比較を行った.なお,有意水準は5%とした.本研究は,中伊豆リハビリテーションセンター倫理委員会の承認(を得て実施し,対象者には本研究について書面及び口頭にて説明を行い,同意書に署名を得た.

【結果】実車評価を実施した脳血管障害者113名は運転適性あり群66名と運転適性なし群47名に分類された.適性なし群において有意な運転行動については,信号機のある交差点(p=0.0001),カーブ走行(p=0.002),一時停止遵守(p=0.039),走行位置遵守(p=0.001),進路変更(p=0.0038),後退操作(p=0.00005)であった.該当者がすべて不可群であった信号機のある交差点を除いて,各項目の対象者98名において運転適性の群間比較を実施,一時停止遵守,進路変更ではすべての神経心理学的検査で不可群に有意な低下を認めた.走行位置ではTMT-A,B,後退操作ではMMSEとTMT-B,カーブ走行ではTMT-A,B,KDBT,ROCFに有意な低下を認めた.J-SDSAの下位検査においては,すべての運転行動において方向,コンパス,道路標識に有意な低下を示した.尚,運転行動項目間に有意な相関は認められなかった.

【考察】当センターでは,認知機能検査に加えて,院内コースにおける実車評価を行い,一定の認知機能と運転操作能力を有していることが確認された対象者に教習所における路上評価を実施している.しかし,情報処理量が増加する路上教習においては6つの運転行動エラーが認められ,それらは複数の運転パターンに分類することができる可能性が示唆された。

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